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  • 抗血小板抗体 anti-platelet antibody

    2025/08/29 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】

     抗血小板抗体は、主に血小板膜糖タンパク質に対する自己抗体と、輸血や妊娠・分娩時に感作された後に見られる同種抗体に大別される。自己抗体が標的とするのは、血小板膜糖蛋白(例:GPIIb/IIIa)やTPO受容体であり、代表的な疾患として免疫性血小板減少性(ITP)がある。一方、同種抗体の場合には自己血小板にない遺伝子多型蛋白部位が標的となるため、血小板輸血の際の不応状態や新生児血小板減少性紫斑病などが代表的な病態である。抗血小板抗体の検索法には、血小板膜表面に直接結合している抗体を見るPAIgG(Platelet associated IgG)と、血清中に存在する抗体を見るPB-IgG (platelet bindable or binding IgG)がある。PAIgG,PB-IgG共に特異度は低い。

    【基準値】

     PAIgG:<46(ng/107 cells),PB-IgG:陰性


    【測定法・測定原理】

     PAIgG:ELISA法,PB-IgG:MPHA(Mixed Passive Hemagglutination)法


    【異常値を示す病態とそのメカニズム】

     PAIgGが異常値を来す疾患として,前述の免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病;ITP)が挙げられる。PAIgGは血小板膜糖タンパク質に存在するIgGを見ているだけなので,必ずしも病態と直結しない。つまり,特発性ITP以外でも自己免疫疾患がある場合,あるいは薬剤性,慢性肝疾患による血小板減少の際にも異常値を来すことがある。PB-IgGは検体血漿と正常血小板血漿を混合して凝集反応を見る。ITPでも陽性となるが,同種抗体は主に血小板膜糖タンパクやHLA class Iの抗原刺激に対して産生する抗体である。そのためその本質は,抗HLA(human leukocyte antigen)抗体あるいは抗HPA(human platelet antigen)抗体であり、血小板輸血不応状態の他、輸血後紫斑病や新生児血小板減少症(NAIT)が代表的な疾患、病態である。


    【異常値に遭遇した際の対応】

     PAIgGが異常値(高値)を呈する主な病態は前述のとおりであるが、中でもITPは異常高値を示すため,他の疾患との鑑別の一助になる場合もある。PB-IgGは,保険上の検査名は「抗血小板抗体」である。特異度は低いが血小板輸血不応状態の患者の場合は、標的となる血小板膜蛋白やHLAの同定(タイピング)のためのスクリーニング検査としての意義はある。

     

    【その他のポイント・お役立ち情報】

     わが国で汎用されているMPHAの抗血小板抗体検出感度はあまり高くない。したがって,臨床所見からPB-IgGの存在が強く疑われるにもかかわらず,MPHAで検出されない場合は,MAIPA(monoclonal antibody immobilization of platelet antigen)などの他の方法を用いるが,自施設で可能な病院は多くない。

     

    参考文献

    1)桑名正隆. 2.抗血小板抗体. 日内会誌, 2009, 98(7) 30-35.

    2)冨山佳昭. 抗血小板抗体の検出とその臨床的意義. 日輸会誌, 2018, 64(6)681-687.

    3)渡邊直英, 半田誠. 抗血小板抗体. Medicina, 2015, 54(5)433-434.