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凝固に伴う線溶促進
解説
【概要】
【機構】
(1) tPAはクリングル2ドメインのリジン結合部位(LBS)およびフィンガードメインを介して高い親和性でフィブリンと結合する。プラスミノゲンもLBSを介してフィブリンに結合するため,基質であるフィブリンを鋳型として3者複合体を形成することになる。これにより効率良いプラスミン産生とフィブリン分解が得られる。tPAは同様に、クロスβ構造を有するβアミロイド等の変性タンパクや細胞表面にも結合し、高い酵素活性を発現する。
(2) プラスミノゲンは、液層中ではpan appleドメインのLys50が自身のクリングル5のLBSに結合した固い構造を有するが、LBS を介してフィブリン等の結合タンパクに結合するとLys50が遊離し活性化され易い高次構造に変化する。鋳型効果と共に結合タンパクの重要な活性化増強機構と位置づけられている。特にプラスミンはリジン残基のカルボキシル側のペプチド結合を切断するため、LBSの結合に重要なC末端リジンを次々と露出して反応を増幅することになる。トロンビンによって活性化されるthrombin-activatable fibrinolysis inhibitor(TAFI)は、C末端リジンを選択的に切断することによりプラスミノゲン活性化を抑制する、線溶阻害因子である。
(3) トロンビンや活性型凝固第X因子はplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)と高分子複合体を形成することによりPAI-1活性を中和し、tPA活性を増強する。これは、tPA活性を良く表わすユーグロブリンクロット溶解時間(ECLT)がカルシウム添加により著明に短縮する現象に、トロンビン産生とこれによるPAI-1の不活性化が関わること、更に活性化プロテインCによりトロンビン産生を抑制すると短縮下溶解時間が回復する事実より明らかになったものである。
【病態との関わり】
本機構は不要な血栓を迅速に溶解し血管の開存性を維持する生理的に重要な機構である。一方、全身性に播種性に血管内で血栓が形成されると、本機構の過剰発現により線溶活性が過剰に高まり播種性血管内凝固症候群(DIC)を呈することになる。
参考文献
1) 浦野哲盟等:血栓形成と凝固線溶,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2013.
2) 浦野哲盟:凝固に伴い線溶活性が増強する機構,Thrombosis Medicine 1:89-92,2011.