- 大分類
-
- 血小板
- 小分類
-
- 分子
CD39
解説
1) 機能
CD39はectonucleoside triphosphate diphsphohydrolase 1, ectoATPDaseとして知られる膜タンパク質で,ATPやアデノシン二リン酸(ADP)をAMPに加水分解するectonucleotidaseである. GTP,GDP,CTP,CDPなども基質とするがAMPなどのモノリン酸は基質とはしない(図).一方,CD73はAMPをアデノシンに変換する類似タンパク質である.血管内皮細胞中に発現しているCD39は血小板から放出されたADPを分解する.これは内皮細胞における抗血栓性の1機序である.また,制御性T細胞でのCD39とCD73の発現が炎症部位でのATP制御による抗炎症性を示す.
2) 遺伝子とタンパク質の構造
CD39遺伝子は10番染色体長腕(10q24.1)の165kbpの領域に存在する.mRNAは様々な臓器に発現する.510アミノ酸残基からなる糖タンパク質であり,N末端とC末端にそれぞれ膜貫通ドメインをもちホモ4量体として存在する(図).活性にはカルシウムやマグネシウムといった二価イオンを必要とする.N末端のパルミトイル基がカベオラへの局在に寄与している.
3) ノック・アウトマウスの表現形
ノック・アウトマウスから得られた内皮細胞は血小板凝集を抑制する作用が欠如する.一方で,ノック・アウトマウスは自然出血を認めないものの,尾切断による出血時間が延長する.また,血小板凝集能の低下を認めるが,apyraseの投与により改善する.ATPによるP2受容体の占拠が,この解離の一因である.NK細胞上のCD39欠損により虚血・再還流による臓器障害が改善することや,気道炎症が改善することが示されている.
4) 病態との関わり
遺伝子組換えCD39の投与によりマウス血小板機能が抑制される.スタチンにより動脈硬化巣のCD39発現が増強することが報告されている.CD39とCD73により産生されたアデノシンがT細胞やNK細胞を介した抗腫瘍効果を減弱するため,CD39に対する阻害抗体が新たな抗腫瘍薬として報告されている.
図表
参考文献
1) Enjyoji K1, Sévigny J, Lin Y, Frenette PS, Christie PD, Esch JS 2nd, Imai M, Edelberg JM, Rayburn H, Lech M, Beeler DL, Csizmadia E, Wagner DD, Robson SC, Rosenberg RD: Targeted disruption of cd39/ATP diphosphohydrolase results in disordered hemostasis and thromboregulation. Nat Med 5: 1010
2) Ohta A, Sitkovsky M: Extracellular adenosine-mediated modulation of regulatory T cells. Front Immunol 5: 304, 2014.
3) 円城寺慶一: Annual Review 血液:179-188,2001,