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血液凝固系と補体系のクロストーク
解説
(概要)
補体系と凝固系は,どちらもタンパク質分解を伴うカスケード反応という共通性を有しており,生体防御反応の1つである炎症反応におけるパートナーと見ることができる.両系のカスケードは,炎症反応を開始させる同じ刺激によって始まる.血液凝固系と補体系の相互作用と考えられる具体的な事象を以下に示す。
(クロストークの具体例)
1. 種々の病態における両系間の相互作用:1)敗血症のin vivoラットモデルに抗C5a抗体を投与すると,死亡率を半減させることができる.このモデルでは凝固・線溶系の亢進が誘導されるが,抗C5a抗体投与により是正される.また,大腸菌惹起敗血症のヒヒモデルに補体のインヒビターを投与し,補体の活性化を阻害すると,組織因子が低下することによって凝固反応も抑えられ,かつフィブリン分解産物(FDP)のようなDICマーカーの上昇が軽減され,内皮細胞の抗凝固活性が維持される.2)抗リン脂質抗体症候群(APS)患者血清から精製されたヒトIgGを妊娠マウスに投与すると,胎盤循環での血栓症により流産が誘導されるが, C3やC5のKOマウスは,抗リン脂質抗体によって誘導される血栓症や内皮細胞の活性化を受けにくく,また,血小板減少症が防止されることから,抗リン脂質抗体によって誘導される補体の活性化がAPSにおける血栓症の出現に関与する.
3. 凝固因子を介した補体活性化: C3KOマウスに免疫複合体を投与して急性肺障害を誘導するとC5の活性化が起き,この活性化はアンチトロンビンやヒルジン投与により顕著に抑制される.また,トロンビンとインキュベートしたヒトC5も,生物活性のあるC5aを与えるように切断されることから,トロンビンはC5 convertase活性を有することが示された.
参考文献
1) 日本血栓止血学会誌 22:171-185,2011.