Multiplate® アナライザー Multiplate® analyzer

【概要】

　Multiplate^®アナライザー(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)は、Cardinalによって開発された血小板凝集測定法（インピーダンス法）である^1,2)。本装置は、血小板凝集に伴う電極間の電気抵抗増加を評価する機能を持ち、また全血での測定が可能なため従来の透過光法と比較して簡便かつ迅速に測定できる。さらに、白血球や赤血球など他の⾎液成分の影響を含めて、より生理的条件下で血小板機能を評価できることが特徴である（多血小板血漿を用いた検査も可能）。

　攪拌された血液検体に血小板凝集惹起物質を添加すると、血小板が凝集して血液中の電極に付着し、これによる電気抵抗（インピーダンス）の変化を連続的に記録・解析される。

【測定方法】^3）

　3.2%クエン酸加、またはトロンビンインヒビター加全血サンプルを用い、採血後0.5〜3時間以内に測定を行う。全血検体での血小板凝集測定の際は、分析前におよそ30分間の静置時間が推奨されており⁴⁾、静置が不十分な場合、結果が低くなることがある。血小板機能の迅速な評価という観点から、この静置工程が機器の有用性を制限する場合がある。

　測定セルを機器にセットし、磁気スターラーの回転を確認後、センサーケーブルをテストセルに接続して検体を分注する。クエン酸加全血の場合、300μLの検体と300μLの0.9% NaCl/3mM CaCl2希釈液（トロンビンインヒビター加全血の場合は0.9% NaCl溶液のみ）を加え、3分間の予熱・平衡化インキュベーション後、活性化試薬20μLを添加し、6分間測定を行う。アラキドン酸、トロンビンレセプター活性化ペプチド（TRAP-6）、アデノシン二リン酸（ADP）などの血小板活性化試薬が使用できる。

　測定セルはディスポーザブルのため常に新しい電極が利用でき、セル内には2対の銀メッキ高伝導性銅線が組み込まれ、独立したセンサーで各検体を二重測定できる多重電極凝集測定法（MEA：Multiple Electrode Aggregometry）を採用している。最大で5チャンネルの並行テストが可能であり、1時間に最大30テストまで実施できる高処理能力を有する。

　血小板凝集によるインピーダンス変化はAggregation Units（AU）として表され、凝集（Agg）はインピーダンス増加曲線の高さ、速度（Vel）は曲線の最大傾きを示すほか、これらを統合した曲線下面積（AUC; area under the curve）は血小板活性化の総合評価指標となる（図1参照）。AUCの単位は[U]（1U = 10 AU*min、旧単位）。

【注意点】

【特徴】

　　豊富な臨床データ⁵⁾が蓄積されており、出血性疾患の診断、抗血小板療法のモニタリング、心血管系患者における治療効果判定のカットオフ値探索、重症大動脈弁狭窄症患者でのVWD発生リスク研究、ヘパリン起因性血小板減少症による血栓リスク評価など、多岐にわたる病態・治療分野で検討・応用されている。