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  • 凝固第VII因子(FVII) coagulation factor VII

    2015/02/17 作成

    解説

     血液凝固第VII因子(FVII)は406ヶのアミノ酸残基から成る1本鎖のセリンタンパク分解酵素前駆体(50KDa)として血中を循環するビタミンK依存性糖タンパク質である。微量に存在する活性化FVII(FVIIa)とともに血管壁の障害や炎症による血管の活性化などで出現した組織因子(TF)とCaの存在下で複合体(図)を形成することによって血液凝固反応を開始する。


    1、半減期、血中濃度

     血中半減期は3-4時間である。血漿濃度は500ng/ml(10nM)で、その約1%がFVIIaとして循環している。


    2、構造と機能

     肝臓で生合成された後、ビタミンKの存在下でN末端の10個のGlu残基がGlaとなるGlaドメイン、2つのEGFドメインおよび触媒ドメインから成る。GlaドメインはCaと配位結合してTFとリン脂質との結合に関与する。触媒ドメインはプロテアーゼ活性を担う。Arg152-Ile153が切断され、S-S結合した軽鎖と重鎖になり、Ile153のα-アミノ基がAsp343のβ-カルボキシル基との間で水素結合することでHis193、Asp242およびSer344によるactive triad、S1特異ポケット、oxyanion holeを形成してFVIIaになるが、単独では酵素作用はない。TFとの結合により活性型に推移して、凝固第X因子および凝固第IX因子を活性化して凝固反応を亢進/増幅する。


    3、ノックアウトマウスの表現形

     FVIIノックアウトマウス(FVII-/-)は胎児の発育には異常がないものの、分娩時に新生児の70%に致命的な腹腔内出血がみられ、生存した個体は24日齢までに頭蓋内出血で死亡した。


    4、 病態との関わり 

     先天性FVII欠乏症は常染色体性劣性遺伝形式で50万に1人の頻度で発症する。ホモ接合体例(FVII活性2%以下)は出血症状を呈するが、無症候例もあり、FVII活性と出血症状との相関性は乏しい。頭蓋内や胸腔内出血など致死的出血をきたす症例もあるが、一般的には皮膚粘膜出血、抜歯後出血、外傷後出血、月経過多などである。後天的にはビタミンK欠乏や肝障害で低下する。

    図表

    参考文献

    1) 高宮脩:第VII因子の基礎と臨床,一瀬白帝,図説 血栓・止血・血管学.東京,中外医学社,2005,313-327.