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  • CD9

    2015/02/17 作成

    解説

    【分子量・構造】

     CD9は血小板の細胞膜に対する抗体の抗原として発見された膜タンパク質である。分子量24~27kDa、細胞膜を4回貫通する特徴を持つテトラスパニンスーパーファミリーに属する(図1)。構造は4つの疎水性ドメインと1つのN-グリコシル化部位を持つ227アミノ酸から構成され、N末端とC末端の両方が細胞内にある。

    【発現・機能】

     CD9は血小板のα顆粒内、単球、好酸球、好塩基球、pre-B細胞、活性化T細胞、神経細胞株など広範囲に発現する。その他にも非T細胞性急性リンパ性白血病細胞に90%、慢性リンパ性白血病および急性骨髄性白血病細胞に50%の確率で発現が認められ、悪性の表現型にも関与する。CD9は細胞外からシグナル依存性にグアニンヌクレオチド結合タンパク質やプロテインキナーゼCなどの細胞内シグナル分子を集合させる作用を持つ。血小板のα顆粒内に発現するCD9はインテグリンαIIb/β3との会合により血小板を活性化し、血小板を凝集させる働きがある。またpre-B細胞の凝集、骨髄由来の線維芽細胞や神経細胞、癌細胞など様々な細胞の接着や遊走に関与する。

    【CD9ノックアウトマウス】

     CD9ノックアウトマウスは、野生型と同様に雄雌ともに正常に発育し、各組織においても異常はみとめられなかったが、CD9ホモ変異体雌マウスにのみ不妊が認められ、CD9欠損卵子は受精の膜融合に異常を示すことが報告されている1)。またリポ多糖刺激により肺に強い炎症を引き起こすことも認められ、CD9とアミノ酸配列の相同性が高いCD81の2種類をノックアウトしたマウスでは肺気腫を引き起こし、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に類似した体重減少、骨粗鬆症、筋肉萎縮といった症状を引き起こすことも報告されている2)

    【病態との関わり】

     CD9はインテグリンとの複合体形成、膜結合型細胞増殖因子HB-EGFの補助因子としての働きを持つことから、細胞増殖・分化・創傷治癒・免疫能・止血・癌転移と多岐にわたる病態と関わりを持つ。

    図表

    • テトラスパニン構造図

    参考文献

    1) Miyado K, Yoshida K, Yamagata K, Sakakibara K, Okabe M, Wang X, Miyamoto K, Akutsu H, Kondo T, Takahashi Y, Ban T, Ito C, Toshimori K, Nakamura A, Ito M, Miyado M, Mekada E, Umezawa A: The fusing ability of sperm is bestowed by CD9-containing vesicles released from eggs in mice. Proc Natl Acad Sci USA 105: 1292112926, 2008.
    2) Takeda Y, He P, Tachibana I, Zhou B, Miyado K, Kaneko H, Suzuki M, Minami S, Iwasaki T, Goya S, Kijima T, Kumagai T, Yoshida M, Osaki T, Komori T, Mekada E, Kawase I: Double deficiency of tetraspanins CD9 and CD81 alters cell motility and protease production of macrophages and causes chronic obstructive pulmonary disease-like phenotype in mice. J Biol Chem 283: 2608926097, 2008.