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RANTES regulated on activation, normal T cell expressed and secreted
解説
RANTES(regulated on activation, normal T cell expressed and secreted)は血小板第4因子(PF4)スーパーファミリーに属するケモカインである.他のケモカインCCファミリー(図)と共にGタンパク質共役型受容体CCR5を共用する.(参照:「Gタンパク質共役受容体と血小板活性化」)
【分子量】
RANTESは8kDaのタンパク質で,血小板第4因子(PF4)と分子量,構造ともに類似している.
【血中濃度】
正常成人の血漿中に70pg/ml程度存在する.
【構造と機能】
血小板α顆粒中に存在し,血小板刺激を加えると上清中に放出される.IL-2,IL-5,IFN-γと協調して好酸球に対する強力な遊走活性を示す.さらに,メモリーT細胞,単球に対してもその活性を有する.好酸球活性化にも関与しており,脱顆粒や接着に影響を及ぼす.メモリーT細胞に対する選択的な遊走活性からアレルギー性炎症との関わりが指摘されている.
【ノック・アウトマウスの表現形】
RANTESノックアウトマウスはmyeloid-biasedの造血幹細胞と骨髄前駆細胞の減少,並びにlymphoid-biasedの造血幹細胞とT細胞の増加を示す.KLS細胞ではラパマイシンの標的タンパクであるmTORの活性減少が認められる.mTORは加齢の重要な規定因子と考えられており,mTORの持続的活性化は造血幹細胞の減少につながると報告されている.また,RANTESノックアウトマウスでは炎症部位におけるT細胞と単球の浸潤が減少しており,さらに,T細胞からのIFN-γ,IL-2の産生も減少している.
【病態との関わり】
RANTESは強力な好酸球遊走,活性化能を持つ.またメモリーT細胞に対する遊走活性も持つことからアレルギー性炎症との関わりが考えられている.実際,アレルギー性結膜炎患者の涙液中ではRANTESが健常人と比して高値である.また喘息患者の血漿中でもRANTESは高値である.血小板活性化に伴い放出されることより,輸血製剤中へ蓄積され,非溶血性輸血副作用の原因の一因となっている可能性が指摘されている. また,RANTESの受容体CCR5はHIVウィルスの細胞侵入に用いられるが,RANTESの結合によりこの反応が阻止されるため,CCR5阻害薬がHIV治療に使用されている.
図表
参考文献
1) アレルギー性炎症におけるRANTESの役割について,呼吸 18(3):324-328,1999.
2) 保存による血液製剤中のサイトカインレベルの変化,日本輸血学会雑誌 47(6):829-836,2002.
3) Ergen AV, Boles NC, Goodell MA: Rantes/Ccl5 influences hematopoietic stem cell subtypes and causes myeloid skewing. Blood 119: 2500
4) Makino Y, Cook DN, Smithies O, Hwang OY, Neilson EG, Turka LA, Sato H, Wells AD, Danoff TM: Impaired T cell function in RANTES-deficient mice. Clin Immunol 102(3): 302