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ビタミンK2・3エポキシド還元酵素 vitamin K-2,3 epoxide reductase
解説
【構造と機能】
自然界にはビタミンK1(VK1)とK2(VK2)があり、VK2は保有するイソプレニル側鎖の数により更に多くの同族体に分かれる。いずれもキノン型として存在するが、生体内に吸収されたキノン型VKはその還元酵素によりヒドロキノン型となった後、VK依存性カルボキシラーゼのコファクターとしてγ‐カルボキシグルタミン酸(Gla)残基の産生に参画し、この反応過程でVK-2・3エポキシドに変換される。1日のVK必要量、Glaの産生量、VKの排泄量から、VK-2・3エポキシドは何らかの代謝経路により還元されてキノン体に戻り、1000回以上繰り返し再利用されると推定されていたが、実際に肝ミクロソームからVK-2・3エポキシド還元酵素(以下、VKOR)が単離された。
【病態との関わり】
VKOR活性が低下すると、VKの再利用能が障害され、結果的にVK欠乏が惹起される。本酵素の阻害を薬理作用としているのが、経口抗凝固薬として古くから使われてきたワルファリンである。すなわち、ワルファリンは、VKORとキノン型VKの還元酵素を標的分子としてVK酸化還元サイクルを止め、VK欠乏状態を惹起することによりその抗凝固作用を発揮する。VKOR複合体サブユニット1(VKORC1)には遺伝子多型があり、遺伝子多型とワルファリン感受性の間に関連があることが明らかにされている他、VKORC1の遺伝子多型と血管疾患、2型糖尿病の動脈石灰化、SLE患者の血栓症との関連も報告されている。また、VKOR活性が遺伝的に低下している家系の報告があり、遺伝子異常を持つ家族では全てのVK依存性凝固因子が軽度ないし中等度低下している。なお、VKの負荷後に血中のVK-2・3エポキシド濃度を測定することにより、間接的にVKOR活性を推定した我々の成績では、幼若乳児や比較的軽度の肝障害患者でも低下が示唆された。