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トロンボポエチン受容体作動薬 thrombopoietin receptor agonists
解説
【概要】
トロンボポエチン(TPO)より作製されたペグ化リコンビナントヒトMGDF(PEG recombinant megakaryocyte growth and development factor: PEG-rHuMGDF、TPOのN末端163個のアミノ酸残基より構成されている)は、健常人に対し濃度依存性に血小板を増加させた。しかしながらPEG-rHuMGDFに対して中和抗体を誘導し、その結果内因性TPOの作用をも抑制したため、遷延性の血小板減少という重篤な有害事象が発生し、開発が中止となった。
この中和抗体誘導問題を克服すべく、TPOとは相同性のないTPO受容体(MPL)作動薬が開発され市販されている。
【種類】
現在市販されている製剤は、以下の2種類である(図)。
1) エルトロンボパグ(レボレード®)
エルトロンボパグは分子量546 ダルトンの小さな非ペプチド化合物で、経口製剤である。毎日服用。
2)ロミプロスチム(ロミプレート®)
ロミプロスチムは、ヒト免疫グロブリンのFc領域にTPO様ペプチドを融合させた分子量約59,000ダルトンの遺伝子組み換え融合タンパクで、皮下注射製剤である。週1回皮下注投与。
TPO受容体作動薬はc-Mplに結合し、巨核球の成熟を促進し血小板産生を亢進させる薬剤である。いずれも用量依存的に血小板増加反応を示す。一定用量投与により5~7日目から血小板数が増加し始め、12~16日目に最大の血小板数となる。継続使用により血小板数の増加効果を維持することができる。
適応症は、治療抵抗性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)である。具体的には、ステロイド療法無効例で、脾臓摘出術が無効あるいはなんらかの理由で脾臓摘出術が禁忌あるいは困難なITP症例が本薬剤の対象となる。難治症例の80%以上に有効であり、血小板数が5万/μl以上に増加し、出血が回避される。現在のところTPO受容体作動薬投与による内因性TPO阻害抗体の誘導は観察されていない。しかしながらTPO受容体作動薬は血小板造血刺激剤であるため、血小板増多のみならず血栓症が誘導される可能性がある。さらには骨髄レチクリンやコラーゲンの増生、異常細胞の増加などの骨髄異常誘導の可能性に関しての長期的な安全性はまだ確立しておらず、今後注意深い検討が必要である。
図表
参考文献
1) 冨山佳昭:トロンボポエチン受容体作動薬による難治性ITPの治療,臨床血液 52:627-632,2011.
2) 藤村欣吾ら:成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2012年版,臨床血液 53:433-442,2012.