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大動脈解離 aortic dissection
解説
[病態]
大動脈解離とは,「大動脈壁が中膜の層で2層に剥離し,動脈走行に沿ってある長さをもちながら2腔になった状態」を言い,しばしば径が拡大して瘤化し,「解離性大動脈瘤」を形成する.通常は「内膜亀裂」 (intimal tear),「入口部」(entry) が存在する .上行大動脈 (大動脈弁口上方数cm以内),左鎖骨下動脈分岐直下動脈管索付着部に1本の横裂として認められることが多い.解離はこの裂口に連続して中膜外層あるいは中外膜境界部に生ずる.急性解離の場合,解離腔の外壁が破裂し,死に至るかあるいは真腔へ再び開口が開く「再入口部」(reentry) が生ずる.
[病因]
何らかの原因で中膜の変性が起こるために大動脈解離が発生するといわれている.中膜の変性は,若年者では特発性,Marfan症候群が存在するが,高齢者では動脈硬化に伴う中膜変性が大きな原因の一つと考えられている.
[分類]
臨床治療に応用する分類は,1)解離の部位からみたStanford分類やDeBakey分類,2)偽腔血流状態からみた分類 (thrombosed型,偽腔開存型),3)解離発症時期からみた分類では,2週間までを急性期,2週間以後を慢性期とする.急性期には,死亡率や重篤な合併症の発生率が最も高いので,早期診断と迅速な対応が必要である.
1. 急性大動脈解離
[症状]
急性大動脈解離の発症時にはほとんどで胸背部の激痛を訴え,A型解離では前胸部痛,B型解離では背部と腹部の疼痛が多い.急性解離の最も重篤な合併症は大動脈破裂と臓器の虚血症状である.縦隔,胸膜腔内に破裂すると,心タンポナーデ,胸腔血液貯留を来し,腹腔内に破裂すると大出血になる.A型解離の急性期の主な死因は,瘤破裂,心タンポナーデが最も多く,他に脳合併症,内臓虚血などである.また,A型解離が大動脈弁輪に及び,大動脈弁閉鎖不全を引き起こすと,大動脈弁の逆流音が聴取することができる.
臓器の虚血症状はその虚血部位により多彩である. A型解離では,冠状動脈と頸動脈の障害による心筋梗塞,失神,昏迷を来す.B型大動脈解離の虚血性合併症は,下行大動脈,腹部大動脈およびその分枝に発生し得る.腹痛 (消化管虚血) および四肢の冷感,疼痛 (四肢虚血) などの症状,また腎虚血により乏尿,無尿が見られ,腎不全に至ることもある.
臓器の虚血症状はその虚血部位により多彩である. A型解離では,冠状動脈と頸動脈の障害による心筋梗塞,失神,昏迷を来す.B型大動脈解離の虚血性合併症は,下行大動脈,腹部大動脈およびその分枝に発生し得る.腹痛 (消化管虚血) および四肢の冷感,疼痛 (四肢虚血) などの症状,また腎虚血により乏尿,無尿が見られ,腎不全に至ることもある.
[治療]
急性期発症直後のA型解離,心タンポナーデ例,ショック例,重要臓器の阻血症状を示す例,あるいは降圧療法にもかかわらず,高血圧が持続する場合や疼痛が持続する例は緊急手術の適応になる.
A型の急性期手術では,内膜亀裂の切除や大動脈基部の確実な修復が重要である.通常,完全体外循環を補助手段として,術中の脳保護のために低体温循環停止法と脳分離体外循環法の併用により手術を行う.大動脈弁閉鎖不全を伴う例に対して,大動脈弁の修復が必要である.
B型では左鎖骨下動脈末梢側の下行大動脈から内膜亀裂を含む解離した下行大動脈を切除し,偽腔を閉鎖した後,人工血管にて下行大動脈を置換する.
最近ではステントグラフト療法も行われる。
A型の急性期手術では,内膜亀裂の切除や大動脈基部の確実な修復が重要である.通常,完全体外循環を補助手段として,術中の脳保護のために低体温循環停止法と脳分離体外循環法の併用により手術を行う.大動脈弁閉鎖不全を伴う例に対して,大動脈弁の修復が必要である.
B型では左鎖骨下動脈末梢側の下行大動脈から内膜亀裂を含む解離した下行大動脈を切除し,偽腔を閉鎖した後,人工血管にて下行大動脈を置換する.
最近ではステントグラフト療法も行われる。
2. 慢性大動脈解離
B型解離は急性期の内科治療後,慢性期に移行することが多い.大動脈瘤を形成すると瘤圧迫による症状が出現するが,前述と同様である。
[診断]
急性解離の既往と,異常な胸部写真と拍動性腹部腫瘤などにより診断される.確定診断はCT,大動脈造影,経食道エコー,MRIなどの画像検査による.
[治療]
慢性期の内科療法は,急性期からの降圧治療を継続し,経口でβ遮断薬やCa拮抗薬などを用いる.また,慢性期になっても瘤拡大,破裂,再解離などが起こる可能性があるため,CTなどにより経時的な経過観察が必要である.
[治療]
瘤の拡張が起こり,A型解離では瘤径6cm,B型解離では5cm以上に拡大したものと急激に拡大するものは手術適応とする.ただし,Marfan症候群による解離性大動脈瘤は,瘤径が5cmのものでも手術適応とする.最近ではステントグラフト治療も行われる。
参考文献
1) 古森公浩,胡海地,山岡輝年,杉町圭蔵:血管内科「大動脈疾患」.メデイカルレビュー社,2001,577-590.
2) 古森公浩 (編集主幹泉孝英,日経メディカル開発)今日の診療のためにガイドライン 外来診療2014大動脈瘤.2014,465-469.