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血友病性関節症 hemophilic arthropathy
解説
【概念】
関節内出血の既往のある関節の関節症であれば、そのほとんどが血友病性関節症であり診断には苦慮しない。しかし出血の自覚のない関節(特に小児の足関節)でも関節症が起こることがあり注意が必要である。
【病態】
関節内出血(特に鉄成分)に刺激された滑膜の増生・絨毛化ならびに血管新生が起り、関節内に侵入したさまざまな細胞から放出される化学物質などにより関節破壊が進行すると考えられている。
【臨床的特徴】
関節内出血・関節症の好発関節は肘・膝・足関節である。関節内出血を繰り返す(半年以内に4回以上または20回以上の同一関節の出血)関節は標的関節と呼ばれ、関節症の進行に注意が必要である。手関節や手指・足趾関節ではほとんど見られないが、肩関節や股関節でも関節症が見られる。特に股関節では一回の大出血で大腿骨頭壊死となることがあり注意が必要である。
【評価方法】
国際血友病連盟は、理学的評価、単純X線評価そしてMRI評価の方法として、それぞれHemophilia Joint Health Score ver2.1、Pettersson score、Additive IPSG MRI scaleを推奨している。しかし関節内血腫や慢性滑膜炎などを侵襲がなく簡便に評価できる超音波検査は、血友病でも有用性が期待されているが、その評価方法はまだ確立されていない。
【保存療法】
関節症の保存療法の基本は関節内出血の予防と出血時の早期治療であり、定期補充療法は特に有効である。また関節周囲の筋力強化や関節可動域の低下予防などを目的とした理学療法も有効である。
【手術療法】
血友病性関節症に対する主な手術治療は、標的関節のような慢性滑膜炎に対する滑膜切除術と末期関節症に対する人工関節置換術がある。いずれも日常生活の向上が期待できる有効な方法である。
【その他のポイント】
関節症を早期に発見し治療するため、出血と関係なく定期的(小児では半年から1年、成人では関節症の状態に合わせて1~2年)に、関節の状態を身体所見と単純X線で評価する。その上で関節を限定したMRI評価がさらに有用である。
参考文献
1) 竹谷英之:血友病性関節症,整形・災害外科55,657-666,2012.