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Dダイマー D-dimer
解説
【基準値】1.0μg/mL未満
【測定法・測定原理】
フィブリノゲンがトロンビンにより分解されてフィブリンとなると、あるフィブリン1分子由来のEドメインと別のフィブリン2分子のDドメインが結合してDD/E構造を形成し、さらに分子内のγ鎖同士またα鎖同士の架橋結合が起こる。隣り合うフィブリン分子のDドメイン2つのγ鎖が端々結合してできたダイマーの新規エピトープを認識するモノクローナル抗体を用いて、この架橋化フィブリン断片を測定するのがD dimer検査である。フィブリノゲン分解産物は検出しないため、FDPに比べてフィブリン分解産物に特異性が高いと言える。
【異常値を示す病態とそのメカニズム】
FDPと同様に、Dダイマーが検出されるということはフィブリンがプラスミンによって分解を受けた断片が血中に存在するということであり、血栓形成と線溶反応を反映している。したがって異常値を示す代表的な病態は、播種性血管内凝固症候群(DIC)と血栓塞栓症である。特に、外科や整形外科の手術後に発症しやすいとされる深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症の早期診断には有用である。ただしそのカットオフ値については検討が必要であり、現時点ではあくまでも除外診断的な意味合い(Dダイマーが陰性であれば深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症を除外できる)で使用すべきであろう。また(フィブリノゲン・フィブリン分解産物の項でも述べたが)DICでも、敗血症性DICの場合のように血栓形成に続く線溶活性化が弱い場合には、Dダイマーの上昇は軽度となる。なお、病態によっては白血球から放出される好中球エラスターゼなどのプロテアーゼの作用によってもフィブリン分解産物が生成される(白血球エラスターゼによるフィブリン分解産物;e-XDPとして測定)が、Dダイマー(プラスミンによるフィブリン分解産物;p-XDP)とは区別して評価する。
【異常値に遭遇した際の対応】
基礎疾患によりDICを疑う場合には、血小板数やプロトロンビン時間(PT)、フィブリノゲン値など他の検査値も参考にし、厚生省DIC診断基準に基づいて確定診断およびDIC治療を行う。臨床症状より深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症を疑う場合には、血管造影や造影CT、MRI等の画像診断により、確定診断および血栓溶解・抗凝固治療を行う(参照:「急性肺血栓塞栓症に対する血栓溶解療法」)。
【その他のポイント・お役立ち情報】
現在市販されているDダイマー測定試薬が、架橋化フィブリン断片を均一に検出しているかどうかは未解決の問題である。すなわち、フィブリンが限定分解されて生じるDダイマーには、分子量の小さいものから大きいものまでさまざまなものがあり、きわめて不均一な集合体であると考えられるからである。このように多様性のあるフィブリン分解産物を、単一のモノクローナル抗体を用いて測定しようとすること自体に無理があるわけで、特異性の異なるモノクローナル抗体を複数組み合わせて測定を行うことが必要になってくるかもしれない。
参考文献
1) Madoiwa S, Kitajima I, Ohmori T, Sakata Y, Mimuro J: Distinct reactivity of the commercially available monoclonal antibodies of D-dimer and plasma FDP testing to the molecular variants of fibrin degradation products. Thromb Res 132: 457