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PAIgG platelet-associated IgG
解説
PAIgGは、platelet-associated IgGの略である。血小板表面に結合しているIgGを意味している。一般的には、PAIgGは抗血小板抗体と考えられている。
1)基準値
PAIgGの測定は一般の病院検査室では実施されていない。特殊検査として検査会社に外注する必要がある。現在のところ数社で測定が行われている。検査会社により基準値に違いがあるので成績を判断する際は依頼した会社の基準値を確かめる必要がある。
PAIgG値は、血小板107個の表面に付着しているIgG量で示すことになっている。以下に3社の基準値を示す。
SRL—————————–46 ng
BML—————————–27.6 ng
三菱化学メディエンス——–25 ng
2)測定法・測定原理1)
ELISA。簡略に紹介するとマイクロプレートに一定量のIgGを固相しておき、検体の血小板浮遊液と酵素標識抗ヒトIgG抗体を加え、一定時間インキュベーション後、洗浄し、マイクロプレートに結合した酵素標識抗ヒトIgG抗体量を測定するものである。
3)異常値を示す病態とそのメカニズム
PAIgGは、厳密にいうと血小板表面に付着しているIgGを意味している。そのため付着しているIgGが抗血小板抗体であるのか、免疫複合体であるのか、あるいは非特異的に付着しているIgGであるのかは区別できない。
PAIgGが高値である疾患として第一に特発性血小板減少性紫斑病(ITP)があげられる。付着しているIgGは抗血小板自己抗体であると考えられている。しかしながら、同じように血小板減少を示す再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などの血小板産生低下疾患においても一部の症例でPAIgG高値を示すことがある。血小板表面にいかなるメカニズムでIgGが付着しているかはよく分かっていない。
血液疾患以外でもPAIgGが高値となる疾患がある。慢性肝炎や肝硬変などの肝疾患、全身性エリテマトーデスやバセドウ病、橋本病などの自己免疫疾患で血小板減少をきたしている場合にPAIgGを測定すると多くの例でPAIgGは高値を示す。血小板表面に付着しているIgGは免疫複合体であろうと考えられている。
4)異常値に遭遇した際の対応
PAIgGが高値であった場合、前述したようにITPが最も考えられる。しかしながら、PAIgG高値を根拠にITPと診断することはできない。その理由は、PAIgG高値を示す他の疾患、特に肝疾患や自己免疫疾患なども考慮する必要があるからである。問診や理学的所見、血液学的検査などを行い、必要がある場合には肝機能検査、自己免疫疾患関連の検査などを実施し、他のPAIgG高値を示す疾患を否定する必要がある。
引用文献
1) 林悟,押田眞知子,椿尾忠博,倉田義之:micro ELISAによる血小板表面IgG量の測定,臨床病理32:1253-1257,1984.