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MYH9異常症(May-Hegglin異常) MYH9 disorders (May-Hegglin anomaly)
解説
【病態・病因】
本疾患は、巨大血小板、血小板減少および白血球封入体を特徴とする常染色体優性遺伝性疾患である。原型のMay-Hegglin異常に加え、類縁疾患と考えられていた封入体形態が異なるSebastian症候群、Alport症状(腎炎、難聴、白内障)を合併するFechtner症候群、封入体を認めずAlport症状を合併するEpstein症候群は全て非筋ミオシン重鎖IIA(NMMHC-IIA)タンパク質をコードするMYH9遺伝子変異が原因であることが判明し、包括した新規疾患概念のMYH9異常症が提唱されている。
【疫学】
本症は先天性巨大血小板症で最も高頻度で、10万人に1人程度と推測される。常染色体優性遺伝性疾患であるが、約30%の症例はde novo変異による孤発例である。
【検査と診断】
血小板数は5万/μl前後のことが多いが、自動血球計数装置では大型の血小板が血小板として計数されないことが多いため、血液塗抹標本の目視による血小板形態と血小板数の確認は必須である。MYH9異常症などの先天性巨大血小板症では半数以上の血小板は大型で、正常大血小板は少数に留まる。一方、特発性血小板減少性紫斑病でも大型血小板はしばしば(10%程度まで)観察されるが、多くの血小板は正常大である。MYH9異常症に特徴的な顆粒球細胞質内封入体は、通常のメイギムザ/ライト染色では明瞭に認められないことがある。封入体はNMMHC-IIAタンパク質の異常凝集により形成されるため、末梢血塗抹標本を用いた免疫蛍光染色によるNMMHC-IIA局在異常の同定と局在分類が、診断とMYH9遺伝子異常部位予測に極めて有用である。MYH9遺伝子異常とAlport症状合併には密接な関連性があるため、予後予測のためにも遺伝子検査の必要性は高い(図1)。
【合併症】
合併症のAlport症状は進行性である。特に小児では、経過とともにAlport症状を発症する可能性があるため十分な経過観察が必要である。腎炎は巣状分節性糸球体硬化症、難聴は両側性の高音域感音性難聴である。
【治療】
通常出血傾向は認めないが、出血症状が著しい場合や手術などには血小板輸血を考慮する。また、待機的手術等ではMPL(TPO受容体)作動薬の有効性が報告されている。
図表
引用文献
1) Balduini CL, Pecci A, Savoia A: Recent advances in the understanding and management of MYH9-related inherited thrombocytopenias. Br J Haematol 154: 161
2) Kunishima S, Saito H: Advances in the understanding of MYH9 disorders. Curr Opin Hematol 17: 405
参考文献
1) 國島伸治:先天性血小板減少症の総説,先天性血小板減少症の診断と分子病態 臨床血液55:882-892,2014.
2) 國島伸治:MYH9異常症の総説,May-Hegglin異常 最新医学別冊,149-57,2009.