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CYP2C19とクロピドグレル
解説
クロピドグレルは血小板膜上のアデノシン二リン酸(ADP)受容体のうちP2Y12受容体を阻害することで血小板凝集抑制作用を発現する。クロピドグレルはプロドラッグであり、活性代謝物がP2Y12受容体に不可逆に結合する。
【薬物動態】
クロピドグレルは上部消化管で吸収され、85%は肝臓でエラスターゼにより不活性代謝物へと代謝される。残りの15%が肝臓の薬物代謝酵素であるcytochrome P450(CYP450)により、2段階の代謝経路を経て活性代謝物へと代謝される。この薬物代謝に関与しているCYP450として1A2、2B6、3A、2C9、2C19が報告されているが、特にCYP2C19による代謝が主であると報告されている。また、CYP2C19で代謝されるプロトンポンプ阻害薬との相互作用の報告があるが、臨床上での薬効には大きな影響がないといわれている。一方、同様なP2Y12受容体拮抗薬であるプラスグレルは、代謝経路は1段階でCYP450の3A、2B6、2C9、2C19で代謝されるが、その代謝酵素でも代謝されるため遺伝子多型の影響は受けにくい。
【遺伝子多型】
そのため、クロピドグレルは薬物動態においてCYP2C19の遺伝子多型による影響を受けることになる。CYP2C19の遺伝子多型は、大きく3つに分類される。変異を持たないextensive metabolizer(EM、CYP*1/*1)、1つ変異を持つintermediate metabolizer(IM、CYP*1/*2、*1/*3) 、2つとも変異を持つpoor metabolizer(PM、CYP*2/*2,*2/*3、*3/*3)に分類される。PMは酵素機能が欠損しており、IMは機能低下が認められる。この遺伝子多型には人種差があり、日本人では18~23%が、欧米人では3~5%が機能欠損している。多くの報告では、IMおよびPMの患者をcarrier、EMをnon-carrierと分類して検討がされており、薬物動態においてはcarrier群の活性代謝物の血中濃度がnon-carrier群のそれと比べ有意に低値を示し、血小板凝集抑制作用も有意に低下した。この結果から、心血管イベントの抑制率もcarrier群では有意に増加すると報告されている。一方、機能獲得型である*17を有する患者では、クロピドグレルによる血小板抑制作用は増強し、出血のリスクが増加すると報告されている。
図表
参考文献
1) 梅村和夫:クロピドグレルレジスタンス,脳卒中32:740-745,2010.
2) 掃本誠治,小川久雄:抗血小板療法に対する日本人の反応性,心臓 44:114-122,2012.