大分類
  • 凝固
  • 小分類
  • 検査
  • 抗カルジオリピン抗体・抗β2グリコプロテインI抗体・ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体 anticardiolipin antibody (aCL) ・ anti-β2-glycoprotein I antibody (a-β2GPI) ・ phosphatidylserine-dependent anti-prothrombin antibody (aPS/PT)

    2025/04/17 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】
    抗リン脂質抗体は、抗リン脂質抗体症候群(APS)および全身性エリテマトーデス(SLE)の診断のために測定される自己抗体である。臨床検査としておこなわれている抗リン脂質抗体の測定は、凝固検査であるループスアンチコアグラントがもっとも古典的であるが、特異抗原を用いた免疫学的検出法が抗カルジオリピン抗体(aCL)、抗β2グリコプロテインI(β2GPI)抗体、ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体である。


    【測定法・測定原理】

    aCLおよびaβ2GPIは、ELISA法により定量的に検出されてきた。当初はリン脂質であるカルジオリピンがaCLの直接の対応抗原と考えられていたが、現在では APS と関連した aCL と、ポリクローナルB細胞活性化を伴う膠原病(APSを合併しないSLEやシェーグレン症候群)や感染症患者にみられる非特異的な aCL は、真の対応抗原の違いにより区別されうることがわかっている。すなわち、APS 患者に検出される aCL はカルジオリピンとβ2GPIとの複合体に結合しており、しかもその結合エピトープはβ2GPI の分子上に存在する。つまり、aCLおよびaβ2GPIは、本質的には同一抗体群を異なる固相化検査で検出していることになるが、クローナリティの違いから両者を同時に検討することが重要である。我が国では両抗体のIgG/IgMを同時に測定するパネル検査が保険収載されている。また、β2GPI依存性抗カルジオリピン抗体と呼ばれるアッセイはAPSに特異性が高いと言えるが、我が国でのみ用いられる検査であることに注意が必要である。

    β2GPIと並ぶ主要な抗リン脂質抗体の対応抗原がプロトロンビンである。ホスファチジルセリンを固相化、プロトロンビンを吸着して抗原としたものを用いてELISAをおこなうと(ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体:aPS/PT)、APSの臨床症状と非常に強い相関があることが示された。aPS/PTはAPSの補助診断として用いる。

    近年、化学発光免疫測定法(CLIA)、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)、および蛍光免疫測定法(FIA)を測定原理とする検査法が保険収載され、普及しつつある。これらの検査では、APS分類基準に採用されている4種類の抗リン脂質抗体(aCL aβ2GPI IgGIgM)を同時に測定することが可能である。


    【異常値に遭遇した際の対応】

    β2GPI依存性aCLが陽性のときは動静脈血栓症の有無を検査する。aCLは陽性だがβ2GPI依存性が確認できないときは、感染症その他の表1の病態や疾患を鑑別する。

    図表

    • 表1.抗リン脂質抗体の検出される疾患

    参考文献

    1. 渥美達也.抗リン脂質抗体症候群の診断.血栓止血誌.2019; 30(1):23-27
    2. Devreese KMJ, Bertolaccini Large, Branch DW et al. An update on laboratory detection and interpretation of antiphospholipid antibodies for diagnosis of antiphospholipid syndrome: guidance from the ISTH-SSC Subcommittee on Lupus Anticoagulant/Antiphospholipid Antibodies. J Thromb Haemost 2025; 23: 731-744.
    3. 本木由香里、野島順三、吉田美香、他. ELISAによる抗リン脂質抗体測定の標準化に向けて.血栓止血誌.2016;27:644−652
    4. Meroni PL, Borghi MO, Amengual O et al. 2023 American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism antiphospholipid syndrome classification criteria solid phase-based antiphospholipid antibody domain-collaborative efforts of Antiphospholipid Syndrome Alliance for Clinical Trials and International Networking and ISTH SSC to harmonize enzyme-linked immunosorbent assay and non-enzyme-linked immunosorbent assay antiphospholipid antibody tests:communication from the ISTH SSC Subcommittee of Lupus Anticoagulant/Antiphospholipid Antibodies. J Throb Haemost 2025; 23: 341-344