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リンパ管形成と血小板 lymphangiogenesis and platelets
解説
【概要】
リンパ管は胎生期に静脈より分離して発生する。近年、この分離に血小板活性化受容体>CLEC-2が必須であることが報告された。
【リンパ管形成機序】
胎生初期に、前主静脈と呼ばれる血管の一部の血管内皮細胞(blood vascular endothelial cell: BEC)がリンパ管内皮細胞(lymphatic endothelial cell: LEC)へと変化を始める.一部のBECでリンパ管特異的膜タンパクLYVE-1の発現と、LECへの変化を司るマスター転写因子のProx1の発現が開始されると、 BECではVEGFR-3の発現が急速に減少するが、LYVE-1陽性細胞では維持される。またLECのみに、CLEC-2リガンドである膜タンパク、ポドプラニンが発現する。VEGFR-3 を強発現するLECは、間質に存在するそのリガンド、VEGF-Cに導かれ静脈壁から発芽し,初期リンパ嚢が形成される.その後主静脈と初期リンパ嚢は分離され,別々の脈管系となる.初期リンパ嚢からは引き続きLECが発芽し,末梢のリンパ管が形成される。
【血小板よるリンパ管分離】
内腔が連続している段階では血液が初期リンパ嚢との連結部に及び、血小板のCLEC-2がリンパ管内皮のポドプラニンと結合して血小板を活性化し、その顆粒内容を放出させる。顆粒中の TGF-β ファミリータンパクがリンパ管内皮の遊走や増殖を抑制して、リンパ管と血管の分離を促進すると考えられる(図参照)。CLEC-2 欠損マウスではリンパ管と血管の分離不全により、血液がリンパ管に流入し、胎仔体表面や成獣の腸管・腸間膜を中心に、赤い網状影と浮腫が認められる。また、ポドプラニン欠損マウスや、CLEC-2 信号伝達系に必須のチロシンキナーゼである Syk やアダプタータンパクSLP-76 を欠損したマウスでも同様の不分離フェノタイプが認められる。顆粒放出は保たれるが血小板凝集能を欠いた血小板を持つGPIIb/IIIa欠損マウスでは不分離フェノタイプがないことから、血小板凝集塊が物理的に吻合部を塞ぐというよりも、顆粒放出が重要であると考えられている。
図表
参考文献
1) 井上修:リンパ管発生に於ける血小板の役割,日本血栓止血学会誌 22:81-86,2011.
2) 井上克枝:癌と血小板,高久史麿,小澤敬也,坂田洋一,金倉譲,小島勢二編,Annual Review 血液 2010.中外医学社,2010,168-175.