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FDG-PET
解説
FDG-PET
<概要>
PET(Positron Emission Tomography:陽電子放出断層撮影)は、陽電子放出核種で標識した放射性薬剤を用いて、体内での代謝・受容体・酵素活性などの分子機能を非侵襲的に評価する核医学検査である。なかでもFDG-PETは、2-[18F]fluoro-2-deoxy-D-glucose(FDG)というグルコース類似体を用いた代表的な検査であり、がん診療におけるスタンダードツールとして確立されている。FDGはブドウ糖と同様に細胞内に取り込まれた後、代謝の途中で代謝停止し細胞内に蓄積される。悪性腫瘍ではグルコース代謝が亢進しているためFDGの集積も高く、画像上で明瞭に描出される。FDG-PETは、悪性腫瘍の早期診断、病期分類、治療効果判定、再発評価に加え、炎症・感染、虚血性心疾患、てんかんなどの脳疾患においても有用である。血栓症や動脈硬化など循環器疾患への応用も進み、心サルコイドーシスや大型血管炎(高安動脈炎または巨細胞性動脈炎)の評価も保健適用となっている。
<検査法、画像撮影法>
放射性薬剤(例:FDG)を静脈内投与し、通常投与から60分程度の待機時間をおいてから全身撮像を行う(撮像時間は約20〜30分)。陽電子放出により体内で生成された2つの511 keV消滅放射線を同時計数方式で検出し、三次元画像を再構成する。現在はPETとX線CTが一体となったPET-CT装置が主流であり、解剖学情報との融合によって診断精度が大きく向上している。さらに、PET-MRI装置も臨床応用されている。FDG-PET単独検査の全身被ばく線量はおおよそ3〜5ミリシーベルト、PET-CT検査ではCTによる追加被ばくを含めて10〜15ミリシーベルト程度である。近年、PET検査および核医学治療の保険適用範囲は急速に拡大しており、がんや神経疾患、さらには標的アイソトープ治療を含めた個別化医療が登場している。認知症診療においては、アルツハイマー型認知症の診断補助を目的としたアミロイドPET(18F-florbetapir、18F-flutemetamolなど)が保険収載され、疾患修飾治療を見据えた早期診断の手段として臨床応用が進んでいる。また、脳腫瘍の悪性度評価や再発鑑別に有用なアミノ酸PET(18F-fluciclovine)も、FDG-PETでは評価困難な脳腫瘍診断として保険診療に導入されている。さらに、β線放出核種による治療においても、神経内分泌腫瘍治療薬・ルタテラ®(177Lu-oxodotreotide)が保険収載された。
シンチグラフィー(Scintigraphy)
<概要>
シンチグラフィーは、体内に投与した放射性薬剤の分布を画像化する核医学検査であり、検出器としてガンマカメラを用い、2次元または3次元の画像情報を取得する。SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography:単一光子放射断層撮影)もこの範疇に含まれる。PET(前述)と比較すると空間分解能や定量精度において劣るが、放射性薬剤の種類が豊富でコストも比較的低いため、汎用性に優れる。
<検査法、画像撮影法>
放射性薬剤を静脈内、経口、または吸入により投与し、体内に分布した放射性核種から放出されるγ線をガンマカメラで検出し画像化する。使用される主な放射性核種には、99mTc、123I、111Inなどがあり、腫瘍、脳血流、甲状腺、心筋、骨、腎などのシンチグラフィー/SPECT検査が広く行われている。多くは短半減期核種を使用しており、体内滞留時間が比較的短く、多くの場合1回あたりの全身被ばく線量は数ミリシーベルト程度である。
参考文献
1) 日本核医学会:FDG PET, PET/CT診療ガイドライン.2020.
2) 日本アイソトープ協会:核医学Q&A http://www.jrias.or.jp/pet/cat3/601.html
3) 日本アイソトープ協会:PET検査Q&A http://www.jrias.or.jp/pet/cat2/301.html