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定期補充療法 regular replacement therapy
解説
血友病の治療法の一つである。出血時に止血を図るために行う補充療法を出血時補充療法(on demand療法)という。それに対して、定期補充療法とは非出血時に欠乏する凝固因子を長期間にわたり定期的に補充する止血管理法である。中等症および軽症の患者は重症の患者と比較して出血頻度が少なく、関節障害の発症も少ないため、本治療法により重症患者を軽症化し、出血および関節障害を減少させることが目的である。開始時期により二つに分類する。通常、関節障害の発症前から開始する治療法を一次定期補充療法(欧米ではprimary prophylaxisという)、関節障害発症後に開始する治療法を二次定期補充療法(欧米ではsecondary prophylaxis)と呼ぶ。いずれも成人になるまで長期間行なう治療法である。対象は原則的に凝固因子活性が1%未満の重症型であるが、関節出血の頻度が高い中等症・軽症もその対象となる。最近、18歳以上の成人で開始するものを三次定期補充療法と呼ぶこともある。手術後のリハビリテーション時や慢性滑膜炎の治療として短期間の定期的な補充療法は、定期補充療法には含めない。このうち、一次定期補充療法は関節障害予防効果のみならず重篤な出血予防、インヒビター発生の予防などについて数多くの報告が有る。最近、二次定期補充療法に関して、出血頻度を減少させる効果、QOLを改善させる効果などその有効性を示す報告が数多くなされている。
レジメンに関する代表的なものを以下に示す。スウェーデン方式は、血友病Aには25-40単位/kg体重を週に3回あるいは隔日、血友病Bには同量を週に2回あるいは2日毎の投与を行なう。オランダ方式は、出血パターンに基づき用量を調整する。血友病Aには15~25単位/kg体重を週に2あるいは3回、血友病Bには30~50単位/kg体重を週に1あるいは2回の投与を行なう。カナダ方式は、週1回の注射から開始し、開始後に個々の患者の出血頻度を基に回数を変化させていく方式である。次のステップに進む基準は、3か月間に同一関節に3回以上の出血、3か月間に4回以上の軟部組織あるいは関節出血、あるいは同一関節に5回以上の出血である。すなわち、血友病Aにおいて最初はstep 1であるが、50単位/kg体重を週に1回の定期補充療法を行なう。上記基準を満たすようになると30単位/kg体重を週に2回のstep 2へ、そしてさらに上記基準を満たすようになると最終ステップである25単位/kg体重を週に3回のstep3へと進む。小児における二次定期補充療法のレジメンも上記の一次定期補充療法のレジメンが使用できる。しかし、成人の二次定期補充療法のレジメンについては、凝固第VIII因子、凝固第IX因子とも成人は小児よりも半減期が長くかつ回収率が高いこと、またPKの個人差も大きいので上記レジメンをそのまま使用するには問題がある。PK studyを行い、さらに患者の仕事や活動度を考慮して、それぞれの患者に適したレジメンを設定する必要がある。
まもなく登場する予定の長時間作用型製剤の導入により、本治療を行う上で障害であった頻回の静脈穿刺の回数は減少し、上記レジメンは大幅に見直されることになろう。