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  • 定期補充療法 regular replacement therapy

    2025/04/24 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    血友病の治療法の一つである。出血時に止血を図るために行う補充療法を出血時補充療法(on demand療法)という。それに対して、定期補充療法(定期投与を含む)は欧米でのprophylaxisに相当し、非出血時に出血抑制のため長期間にわたり定期的に止血製剤を投与する治療法である。歴史的には、インヒビター非保有の重症型血友病患者に対して、欠乏する第Ⅷ因子あるいは第Ⅸ因子を補充し、重症患者を軽症化し、出血および関節障害を減少させることが目的であった。開始時期により三つに分類1)された。通常、関節出血発症前あるいは1回以下の関節出血後で関節障害の発症前の3歳前に開始する一次定期補充療法、2回以上の関節出血はあるが関節障害発症前に開始する二次定期補充療法、関節障害発症後に開始する三次定期補充療法に分類される。本治療法の対象は、従来、原則的に凝固因子活性が1%未満の重症型であったが、近年は出血頻度や活動度により中等症・軽症もその治療対象と拡がってきている。最近prophylaxisの定義も変更され、治療の開始時期や製剤の用量でなく、アウトカムに基づき血友病患者の出血を予防すると同時に、血友病患者が活動的に生活を送り、非血友病患者と同等のQOL達成するために行う治療法2)とされている。

    標準型凝固因子製剤による定期補充療法では、本治療を行う上で障害となる頻回の静脈穿刺による注射を必要としたが、2014年以降の半減期延長型凝固因子製剤の登場により静脈注射の回数が軽減され、トラフ値を高めることも可能となった。また、定期投与として静脈注射薬ではない皮下注射製剤である第Ⅷ因子代替二重特異性モノクロ―ナル抗体製剤が2018年に、皮下注射製剤である抗TFPIモノクロ―ナル抗体製剤が2024年に出血抑制治療薬として使用できるようになり、さらに本治療法の導入、継続が容易となっている。

    なお、インヒビター保有患者に対しては、バイパス止血製剤、第Ⅷ因子代替二重特異性モノクロ―ナル製剤や抗TFPIモノクロ―ナル抗体製剤の定期投与により出血抑制を図ることが可能である。なおこのうち第Ⅷ因子代替二重特異性モノクロ―ナル製剤はインヒビター保有血友病A患者に対してのみ有効で、他の製剤はインヒビター保有血友病AならびにB患者に対しても有効である。

    現在では、personalized prophylaxis、すなわち、それぞれの患者の活動度や生活スタイルを考慮し、定期補充療法(定期投与を含む)に使用する薬剤ならびに治療レジメンを患者ならびにその家族と医療者が共同して選択する治療法(shared decision making; SDM)の実践が求められている。

    引用文献

    1. Srivastava A, et al: Guidelines for the management of hemophilia, Haemophilia 19: e1-47,20132)
    2. Srivastava A, et al: WFH Guidelines for the management of hemophilia, 3rd edition Haemophilia 26(Suppl 6): 1-158, 2020