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  • 抗線溶療法の適応

    2015/02/17 作成

    解説

     抗線溶薬としてトラネキサム酸が使用可能である。トラネキサム酸はプラスミノゲンの高親和性リジン結合部位へ結合し、プラスミノゲンのフィブリン結合をほぼ完全に阻害して抗線溶作用を発現する。静注後24時間以内にほぼ95%が未変化体として尿中排泄される(ラット)。保険適応は、全身性および局所性線溶亢進が関与すると考えられる出血傾向であり、通常は手術中・術後の全身性・局所異常出血、肺・腎・鼻・性器・尿路出血等に止血薬として使用される。血栓性疾患(脳梗塞等)では血栓増悪の可能性があり、腎排泄のために腎機能不全症例では慎重投与が必要である。体外循環下手術症例および人工透析症例では痙攣発現の報告があり、投与に際しての注意が必要である。尿路出血では血栓形成による尿路閉塞の可能性も指摘されている。

     トラネキサム酸による出血量減少と予後改善を目的としたランダム化比較試験が数多く施行されており、体外循環使用手術、整形外科手術、脳・脊髄手術、一般外科手術、月経過多症例、分娩後出血、消化管出血、外傷などでトラネキサム酸の有効性が報告されている。

     播種性血管内凝固症候群(DIC)と明記された病名での保険適応はないが、線溶亢進型DICでは抗線溶療法の有効性を示唆する報告がある。日本血栓止血学会による「科学的根拠に基づいた感染症に伴うDIC治療のエキスパートコンセンサス」では、感染症による線溶抑制型DICへの抗線溶療法は絶対的禁忌とした上で、固形癌、腹部大動脈瘤、Kasabach-Merritt症候群、急性前骨髄球性白血病(ATRA非使用例)では専門家に相談して使用するよう勧めている(推奨度C)。なお、ATRAは急性前骨髄球性白血病の線溶亢進の原因とされるアネキシンA2の発現を強力に抑制するため、ATRA使用中の抗線溶療法に伴う重症血栓症併発および死亡報告が蓄積されている。このためATRA投与下における急性前骨髄球性白血病での抗線溶療法は絶対禁忌である。

    参考文献

    1) 日本血栓止血学会学術標準化委員会DIC部会:科学的根拠に基づいた感染症に伴うDIC治療のエキスパートコンセンサス,日本血栓止血学会誌20:96-98,2009.
    2) MacCormick PL: Tranexamic acid: a review of its use in the treatment of hyperfibrinolysis. Drugs 72: 585617, 2012.